The Identity Architect, the Story Tailor

アイデンティティの設計士が仕立てる、世界とあなたの物語

「物語を仕立てる」ってどういうこと?⑴

お立ち寄りのみなさま、いらっしゃいませ。
本日も、アイデンティティの設計士が仕立てる物語のお店は、あなたのためにひっそりと開店しています。

さて今日は、アイデンティティの設計を専門としているみっこが、なぜ「物語を仕立てる」ようになったのか、についてです。というか、「物語を仕立てるってなんなのさ」っていう話ですね(笑)

なにせ自分の生業につながるお話なので、少し長くなるかもしれません。ですが徐々にその方向にお話を進めてまいりますので、どうぞ座ってお茶でも飲みながら、お付き合いいただけると嬉しいです。

f:id:mikikoumeda:20180518201645j:plain

「歴史は物語。すべてはつながっているのよ。」

そのフレーズを、溢れる情熱と口角泡を飛ばしながら言い放つ。そんな小柄ながらも力強いユダヤ人女性は、当時70代だったと思います。

大学在学時に取った、歴史学入門クラスのT教授。わたしの人生のターニングポイントに出会った人のうちの一人です。

 

⬛︎Passion is contagious. 情熱は伝染する。

みなさんの人生の中で、「この人との出会いが人生を変えた」というような人物はいますか?

あの人のあの言葉、あの出会いが、自分の価値観を変えた。

そんな出会いがひとつあるだけで、人生というストーリーの豊かさの魔法を実感できるものです。

もちろん、毎日出会う一人ひとりがたくさんのことを教えてくれます。でも自分のレールをまったく違うベクトルに転換させ、大きく舵を切らせる追い風になるような出会いを挙げるなら?

わたしにはそんな人物が3人います。冒頭のユダヤ人女性はそのうちの一人です。

グレーのくせ毛は肩までの長さ。ニューヨーク出身のT教授、身長は150cmくらいでしょうか。華奢で痩せ型で、今にも折れてしまいそう。でも10代後半〜20代前半の生徒たちの誰よりも情熱に溢れ、エネルギー体のような人。

目が少女のようにキラキラと輝いて。でもT教授の顔に刻まれた皺は、ユダヤ民族が辿ってきた苦難の歴史と、彼女自身の怒涛の人生を物語っているようでした。

f:id:mikikoumeda:20171215153618j:plain

面白いことに、どんなに勉強が嫌いな生徒でも、T教授のクラスだけは文句を言いながらも勉強するんです。彼女の歴史学のテストは、ゆうに5時間はかかる難関でした。それにリサーチペーパー10枚なんて課題も。

今振り返ってみても、なんて生徒泣かせな教授なんでしょうね…。

でもみんな、T教授の情熱に応えるように、それらの課題を協力しあってクリアしていくんです。普段ならタバコ吸いながら授業をサボるような学生も、ぶーぶー言いながらも「歴史っておもしろいよね」って、ディスカッションの輪に加わってくるのです。

わたしはそのクラスのチューター(学業面でサポートが必要な生徒に勉強を教える学生)を教授に頼まれてやっていたので、そんなクラスメイトたちの変化がよく見える立場でした。

情熱は伝染する。

T教授はそれを体現し、わたしたちに教えてくれました。

わたしもそんな存在になりたい。そう心から思いました。
それは今も変わらず、現在の仕事の原動力にもなっています。

 

⬛︎History is a story, everything is connected.

そんなT教授が教えてくれたもうひとつのこと。それが、冒頭のフレーズです。

「歴史は物語。すべてはつながっているのよ。」

みなさんも学校で歴史を勉強したと思います。そこで質問!
歴史って、年号を覚えるものだと思ってませんでしたか?

 

 

はい、うなづいたそこのあなた。あなたが当時T教授のクラスにいたとしたら、彼女の情熱の口角泡が飛んできたことでしょう(笑)

わたしもT教授に出会うまでは、学校で学ぶ歴史は年号の羅列であったことが多いです。でも実際に、あの数字の中に、どれだけのドラマがあるのか。

f:id:mikikoumeda:20180525113142j:plain

それは自分の人生という歴史に置き換えてみても同じだと思います。

自分が生まれた日にせよ、自分が初めて言葉を発した日にせよ、学校を卒業した、初恋をした、夢が叶った日…。どんなことにもストーリーが詰まっている。

点のような出来事はすべて、切っても切れない関係性を持って、繋がっています。曾祖父母がいなければ、今、自分が存在できないように。一枚の布のように、一本の糸のように。

そして、さらに言葉にするなら、自分という糸が他者の人生と結ばれあい、映画「君の名は。」で出てくるセリフのイメージですね。

縒り集まってかたちを作り

捻れて、絡まって、時には戻って

途切れて、また繋がる。

そんな連綿と続く、壮大な物語から、「一部」を切り取ったものが、年号とそこに対応する出来事にすぎません。

その最先端が今この瞬間であって、その物語を生きる主人公が自分。手垢のつきまくった表現ではありますが、それがどんな重さを持つ表現なのかまで、感じきったことはあるでしょうか。

もしなければ、ぜひ今一度じっくりと、その物語を遡ってみてください。

すべてがつながっていることを知る。その始まりは、あなたが生まれた時でしょうか?

自分の意識が生まれた時もそう、両親の出会い、両親それぞれの祖父母の出会い、もっともっと糸を辿っていけば、魚だった頃に戻ることだってできます。極端に言えば、この宇宙の始まりとされる時、そして、その前まで。

f:id:mikikoumeda:20171221223447j:plain

⬛︎Walking on the street with your eyes covered.

ここまでいけば話が大きくなりますが、そんな大きな大きな物語が紡がれ、一点に集約されているのが、今ここです。
そんな物語をいつも認識できる生き方と、そうでない生き方。わたしは、その物語を知っている自分で生きていたいと思いました。その思いは、T教授と出会った頃から変わりませんし、nTechの創始者であるNoh Jesuに出会ってからさらに強まりました。

歴史を知らずに今を生きることは、目隠しをして外の道を歩いているのと同じよ。

これは、T教授の言葉。

自分とはなにかを知るには、人間とはなにかを知らないといけない。
人間とはなにかを知るには、この宇宙とはなにかを知らないといけない。
すべてを知って、ようやくすべての意味が分かるようになるんだよ。

これは、Noh Jesuの言葉。

わたしにとって、二人の言葉は同意義です。

今ここまで続く物語を知る。それができて初めて、物語の脈絡に沿った、自分の人生の方向性が見えてきます。だからこそわたしは、セッションにおいても、社会変革のビジョン設計においても、「物語」をなによりも大切にします。

まずは、この世界の物語のあらすじを理解すること。そこから、未来のベクトルをどこへ向かわせるのか、「物語を仕立てる」プロセスが始まります。

あなたは今、目隠しをしたまま、前に進もうとしていませんか?

もしそうであれば、一旦足を止めてみてください。そして、物語を遡ってみてください。今まで打ってきた点と点を、線で繋いでみること。これだけでも世界の見え方、人生の捉え方が変わってきます。ぜひお試しください。

 

さてさて、今日もすっかり長くなってしまいました。今日はここまでにして、続きはまた明日。「物語を仕立てる」、その本質について書きたいと思います。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

みっこ